極寒にも屈しない"N-3B"こそ真冬のマスターピース

真冬の寒さを凌ぐヘビーアウターとして、揺るぎないポジションを確立しているN-3B。“ フライトジャケットの王様 ” とも称される MA-1 と並び、世界各国で老若男女に親しまれるアメリカ軍の名作です。また〈アルファ インダストリーズ〉においても長きにわたって絶大な支持を得ている看板アイテムのひとつであり、国内外の人気アーティストやファッショニスタをはじめ、影響力の強いセレブリティにも愛用者は多数。その歴史や特徴を、最新コレクションとともにご紹介します。

数あるミリタリージャケットのなかでも最高峰の防寒性能を誇る

N-3B が生まれたのは 1960年代の初頭のこと。ただしルーツは、第二次大戦まで主流であったレザーやコットン製に代わり、ナイロン素材のフライトジャケットが続々と採用された戦後すぐにまで遡ります。遥か上空、ヘビーゾーンと区分される -10℃~-30℃の極寒域での着用を目的に開発され、アメリカ陸軍航空隊のカラーであるオリーブドラブをまとって'45年に登場した N-3 こそが、現在まで続くNシリーズの起源。'50年代に入ると新生アメリカ空軍の統一色であったエアフォースブルー、いわゆるネイビーブルーに包まれた N-3A へと進化を遂げ、その後継モデルとしてセージグリーンの N-3B が誕生しました。

フライトジャケットといっても、腰までを覆うハーフコート型のそれは、狭いコックピットに座り、操縦桿を握るパイロットには不向きであり、彼らはショート丈の N-2B を着用。N-3B は飛行中にドアコックを解放する輸送機や空中給油機、救難ヘリの搭乗員に支給されていました。全体のサイズ感が大きく設定されているのは、通常のフライトジャケットの上から重ね着し、寒さを凌ぐオーバーコートだったため。また現在、米軍の規定では極寒地での地上作業用のアウターとされており、〈アルファ インダストリーズ〉の N-3B もアラスカの空軍基地などのグラウンドクルーに採用されています。

民間用、すなわちタウンユース向けに〈アルファ インダストリーズ〉が販売する N-3B は、その本来のデザイン、優れた防寒性や機能を余すことなく継承しながら、デイリーかつファッショナブルに着られるようブラッシュアップ。生地には MA-1 と共通となるタフなナイロンヘビーツイルを用い、内側には保温性を高める中綿を封入。エマージェンシーキットやタバコを収める、ジッパー付きのシガレットポケットを左腕に設けている点も MA-1 と同様のディテールです。

対して N-3B の特徴となるのが、顔回りや首を寒さから守る大きなフードが取り付けられている点。これは吹雪のなかでも視界が確保できるように考慮された設計となっており、その周囲には毛足の長いフェイクファー、フードの裏地もボア張りになっています。

フロントには、ジッパーの微細な隙間から寒風が侵入するのを遮断すると同時に、ジッパーの凍結を防止するストームフラップを重ね、胸部には手を温めるハンドウォーマーポケット、腰にもフラップポケットを配備。それらのディテールは、いずれも防寒グローブを着用したままでも扱いやすい仕様になっています。また袖口を延長し、ニットリブを内側に隠すことで冷気が入り込むのを防ぐインナーカフ仕様、腰回りのダブつきを抑えるのと併せ、裾からの冷たい空気や風もシャットアウトするため、内側にはウエストを絞るドローストリングが。

こうした最高峰の防寒性と機能性を追求したデザインやディテールは、それが誕生した半世紀前から基本形を変えることなく、現代へと受け継がれています。そして極地に挑む登山家や探検家、極寒の環境で働く作業員たちが身にまとうハイスペックなダウンジャケットの多くが、N-3B をベースにアップデートしたものとなっている事実。加えて、世界中のファッションブランドが、こぞって N-3B をモチーフにしたアウターを発表していることも、オリジンである米軍モデルがいかに完成度の高い、優秀なプロダクトであるかを明白に物語っています。

N-3B TIGHT

10年以上にわたる不動の人気モデル 
これぞ N-3B のニュースタンダード

オーバーコートであった元来のN-3Bは、そもそものサイジングが大きく、タウンユースに適さないことも。こちらの「N-3B タイト」は、そうした難点を解消すべく、日本人の体型に合わせてフィットを細身に改良。アメリカ軍の正規納入メーカーだからこそのミルスペックに準拠した本格仕様はそのままに、より街で着こなしやすい洗練の一着です。

カラーは基本のセージグリーンをはじめ、人気のブラック、さらにネイビーやグレー、フードファーまで同色で統一したブラック×ブラックを用意。加えて今季は、新色となるコヨーテブラウンとタイガーカモフラージュも仲間入り。

N-3B MOD

ヴィンテージに敬意を払いながら 
さりげない遊び心も効いた新鮮な逸品

航空機には搭乗せず、極寒地での任務に就くグラウンドクルー用となった後期のN-3B。こちらの一着は、従来のナイロンシェルから変更になったその当時のモデルにインスピレーションを得て、表地にはヴィンテージにならったコットンポリエステル素材を採用。またセージグリーン&オリーブドラブの2色をパネルごとに使い分け、さりげなくも個性を感じさせる同系色のクレイジーカラーへと仕上げたユニークな逸品です。さらにフード回りのファーを省略している点も特徴であり、“ 修正・変更 ” を意味するモディファイの略である「MOD」の表示を名に冠しています。

文:いくら直幸