1903年、ライト兄弟の初飛行を皮切りに20世紀の世界史を変える発明となったのが飛行機。当然それは各国の勢力争いにも影響を与え、1921年に発刊されたジュリオ・ドゥーエの「制空」が、これまで軍艦が主導権を握っていた戦争に新たな手法を与えることとなりました。これによりミリタリーウェアの世界にも、野戦用と航空用という2大カテゴリーが生まれることとなったのです。
さて、航空用ミリタリーウェアの代名詞と言えば「フライトジャケット」が挙げられますが、アメリカ軍(当時の陸軍空挺部隊)が1927年に初採用したそれは夏季を想定したライトゾーン(10~30度)用ジャケット「A-1」でした。無論、当時はフライトジャケットの代表格「MA-1」のような化学繊維製ではなく、強靭な馬革や羊革などを用いたレザー製。続く「A-2」、1934年に採用されたヘビーゾーン(-30度~-10度)に属する「B-3」など、これらはこれらでレザーならではの無骨な佇まいが魅力となり、今でも人気のミリタリーウェアとして多くのレプリカがリリースされています。
時は流れてWW2期。アメリカ陸軍空挺部隊は独立して空軍となり、軍用機もレシプロ機からジェット機へと進化。これに伴ってフライトジャケットも急速な変化を遂げていきます。同時期に採用されたフライトジャケット「B-15」も、「B-15B」よりコットン製であった初期型からナイロン製へと変更され、かの「MA-1」誕生に大きな影響を与えました。現行の「CWU-45P(および36P)」を見てもわかる通り、今では計器に囲まれたジェット機のコックピットに合わせて「シンプルなスタイル」、「より高性能な化学繊維製(ノーメックスetc)」が当たり前となったフライトジャケットですが、人類の歴史と照らし合わせてみると、よりその佇まいに愛着が湧くのではないでしょうか。

1943年、素材の枯渇によりレザー製からコットン製となった「B-10」を引き継ぎ、近代フライトジャケットの礎となった「B-15」。中期よりナイロン製へと変わり、化学繊維ボディ×アルパカウールライナーというハイブリッドな過渡モデルとなりました。

こちらは「ライトゾーン※10度~30度までの気温域」向けに開発された現行の夏季用フライトジャケットである「CWU-36P」。中綿が取り除かれるなど機動性が重視されたつくりとなっています。

2009年、空母ロナルド・レーガンに訪問したジョー・バイデン大統領(当時は副大統領)も「CWU-45P」に袖を通していました。スマートな現行フライトジャケットはスーツスタイルにも違和感なく馴染んでいるのがわかります。